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この記事の読みどころと情報状態
原生林の90%が失われた地域で、牧草地46haを森に戻したマシュピ農園。樹木18種から50種以上、鳥類54種から156種へ。森林農法の実際を公式情報から辿ります。
- 公式出典
- 2件
- 確信度
- 高
- 情報リスク
- 低
- 更新日
- 2026.08.19
- 再確認日
- 2026.11.19
森林農法は森を残したまま作物を育てる方法ですが、すでに森が失われた土地ではどうするのか。エクアドルのマシュピ農園は、牧草地を森に戻すところから始めています。しかも、その過程が数字で記録されています。ウインドファームの公式サイトの産地紹介をもとに整理します。

引用: 株式会社ウインドファーム公式サイト 産地紹介(2026-08-19確認)
原生林の90%が失われた地域
マシュピ農園があるのは「チョコ生命地域」と呼ばれる場所です(チョコレートとは関係なく地名に由来します)。パナマ南東部からエクアドル北部までを含む、18万7,400平方kmの広大な緑の回廊で、山岳部と雲霧林から成り、亜熱帯と熱帯が混在しています。
4,000m級の山々が連なる複雑なエコシステムと降水量の多さが、地域固有の豊かな動植物を育んできました。その多様性から「マシュピ-ワイクヤク保護区」にも指定されています。
しかしこの数十年で、地域一帯では大規模な森林伐採が進みました。酪農と、バナナ、オイル用のヤシ、サラダ用のヤシ、カカオの単一栽培が盛んになったことで伐採に拍車がかかり、原生林の90%が失われたと公式サイトは記しています。
単一栽培が森を削るという構図は、タイのレイジーマン農場で遺伝子組み換えトウモロコシが村に入ってきた話と同じです。
2008年、牧草地を買って森に戻す
マシュピ農園のアレホさんとアグスティーナさんは、ほとんど牧草地になっていた土地56ヘクタールを2008年に購入しました。翌年から、そのうち46ヘクタールを森として再生する活動を始めます。
意識したのは「自然遷移」、つまり裸地から森林が形成される過程です。人間が手を加えずに森ができていく過程をまねながら、森を再生する試みでした。
具体的な手順が書かれています。この地域の森が自然に再生されるとき、最初に生える植物(パイオニアプランツ)はヘリコニアでした。そこで原生林からヘリコニアの仲間を数種類移植することから始め、森から様々な種や苗を採取して、高低差を最低4段階つけて植えていきました。
5年で、何が増えたか
再生の結果が数字で示されています。
| 項目 | 開始時 | 5年後 |
|---|---|---|
| 樹木 | 18種類ほど | 50種類以上 |
| 草類 | 12種類 | 23種類 |
| 鳥類 | 54種類 | 156種類 |
樹木を植えたあとは、風や虫、鳥たちによって種が運ばれ、草類と鳥類が増えていきました。人が植えたのは最初の層だけで、そこから先は生態系が自分で増やしています。
森林農法の記事で、生物多様性の豊かな森では年間100種類以上の鳥が見られる一方、単一栽培では数種類しか見られないという公式の説明を紹介しました。マシュピの記録は、その差が数年で生まれ得ることを示しています。
アレホさんの言葉も引かれています。「毎日が学びの連続です。」土を再生する微生物、フンコロガシの働き、緑肥につられて来るミツバチやスズメバチによる生物的制御、鳥を呼び寄せるイチジク類の樹々。オニオオハシ、フウキンチョウ、ハチドリ、10種類以上のカエル、夜に「いびき」をかくヤマネコ。
森を模倣しながら、カカオを植える
56ヘクタールのうち10ヘクタールは畑として使われています。ここでも、自然の森が再生していく様を模倣しながら森林農法でカカオ栽培が始まりました。
順番があります。まずパイオニアプランツのヘリコニア。次に「カカオの母」と呼ばれるマメ科の植物です。枝を土に挿しただけで根を伸ばす丈夫な植物で、窒素(葉を育てる)、リン酸(花や実を育てる)、カリウム(根を育てる)を土に与えます。葉や枝を定期的に落として土の表面を覆うため、土壌流出を防ぎながら栄養源にもなります。
マメ科の植物を緑肥にする手法は、ブラジルのジャカランダ農場でも使われていました。
2010年からは次の段階に進み、カカオと様々な果樹、ヤシなどを植えています。現在の果樹はパパイヤ、ボロホ、マンゴスチン、ドリアン、パンの実、ジャックフルーツなど20種類以上。その際も、外来種が在来種を駆逐しないよう、木々の特徴を把握して攻撃的でない種類を厳選しているとされています。
虫と菌に仕事をさせる
農薬を使わない農園が、病害虫にどう対応しているか。マシュピの方法は具体的です。
受粉について。カカオを収穫した後、その場で実を取り出し、殻(カカオポッド)は一定の距離をおいて畑に残します。殻に残る果肉につられて小さな虫が孵化し、その虫は遠くへ飛べないため、カカオの花の受粉を促す役割を果たします。
病気について。カカオがかかりやすいのは「黒いカカオ豆」と「魔女の箒」という菌による病気です。病気が付いた豆を、落ち葉に菌が付着して白くなったところへ触れさせておきます。すると自然界に存在する菌が病原菌を食べてくれるため、蔓延を防げます。
公式サイトはこう結んでいます。マシュピ農園のカカオは、人の手だけではなく、木々や虫や菌など、すべての生き物の助けを借りて育っていく、と。
有機栽培の記事で紹介したミミズコンポストやブロッカのトラップと同じく、外から資材を買うのではなく、その場にあるものを回す設計です。
「第四のカカオ」ナシオナル種
品種の話も興味深いものです。
世界で生産されているカカオ豆は大きく3種類。西アフリカ中心の「フォラステロ種」、南米・カリブ海諸国の「クリオロ種」、その2種のハイブリッドである「トリニタリオ種」です。
そして「第四のカカオ」と呼ばれるのが、エクアドルでしか栽培できない「ナシオナル(アリバ)種」です。原生種に近く香り高い一方、病気に弱いため生産量全体の2%程度と大変希少だとされています。マシュピ農園で栽培されているのは、このナシオナル種です。
カカオの起源は紀元前3,000年頃のメキシコというのが定説ですが、近年、エクアドル南部の紀元前5,500〜5,300年頃の遺跡で発見された陶器からカカオの澱粉が見つかったことも紹介されています。
森の再生から、チョコレートバーまで
2015年からは、農園で栽培したカカオからチョコレートを製造するまでになりました。
森の再生に始まり、100%オーガニックなカカオの森林農法による栽培から、チョコレートバーへ加工する最終工程まで、すべてひとつの農園で行われています。EUとアメリカUSDAの2種類の有機認証を取得しているとされています。
純正のナシオナル種の香りと、森の木々や花、果実の香りを損なわないよう、機材も地域の工房と相談して作っているそうです。カカオ以外の材料もほとんど農園産で、例外は砂糖、塩、チョチョスと呼ばれる豆のみ。それらも信頼できる会社や生産者団体から購入し、トレーサビリティを確保しているとされています。
農園の合言葉として掲げられているのは、この一文です。
地球を守ろう、だって地球はチョコレートがある唯一無二の星だから
(引用: 株式会社ウインドファーム公式サイト 産地紹介/2026-08-19確認)
コーヒーの話に戻ると
マシュピはカカオの農園ですが、当サイトがこの事例を扱う理由は明確です。
ペルーのバナナフラワーで見たように、森林農法の農園はコーヒー以外の産物を生みます。マシュピはその極端な例で、森を再生する過程そのものが生産活動になっています。そして、その森が病害虫の抑制と受粉を担い、農薬を使わずに済む条件をつくっています。
コーヒーを森の中で育てるという選択が、なぜ成立するのか。マシュピの5年間の記録は、その答えの一つを数字で示しています。
当サイトがAmazonの掲載商品として案内しているのはコーヒーです。商品はトップページの選択表から確認できます。カカオ製品の取り扱いについては、公式サイトや直営オンラインショップをご確認ください。
出典と注記
- 株式会社ウインドファーム公式サイト 産地紹介「マシュピ農園」(2026-08-19確認)— チョコ生命地域、原生林の減少、土地の購入と森の再生、樹木・草類・鳥類の増加、自然遷移の模倣、カカオの母、受粉と病気への対応、ナシオナル種、チョコレート製造と認証
- 株式会社ウインドファーム公式サイト「4つの理念」(2026-08-19確認)— 森林農法の考え方
本記事は2026-08-19時点の公開情報を要約した独立ガイドです。農園の状況、認証、取扱商品は更新され得ます。数値は公式サイトの記載に基づくもので、当サイトが独自に検証したものではありません。当サイトはウインドファームの公式サイト・提携サイトではありません。
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SOURCE NOTES
参考資料・出典
- https://www.windfarm.co.jp/equador-cacao-mashpi2026年8月19日確認
- https://www.windfarm.co.jp/4rinen2026年8月19日確認